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左岸とマルテロドーロのこと

2021.2.3

 今回は、私たちマルテロドーロと、隣の喫茶店 左岸の紹介です。

マルテロドーロ

マルテロドーロはイタリア語で金の槌のことです。アトリエの名前を決めるに時に考えたのは、イタリア語で、呼びやすい音と、彫金に独特のものの名前、の3点です。もっともイタリア語は大抵呼びやすい音なので(笑)、問題は彫金ぽい工具って何?ということでした。彫金の工具は、大きいものは大工道具に近く、小さいものは歯科技工士の工具と近いのです。
 どうにも思いつかず、工具を外れて色の名前や動物の名前やなんだかんだをリストアップして、ようやく思い至ったのが彫金ハンマーと呼ばれる金槌でした。彫金ハンマーは片側が大きい皿型の面で、もう片側は丸い球状になっています。彫金・金工の作業に向いた“金槌”です。ということで、これに決まりました。
 マルテロドーロは、体験型の彫金教室です。教室というのは基本的に体験するものなので、正しくは、日帰り体験のできる彫金教室ということです。何より、身に着けるものをて作りする楽しさをお伝えしたい、というのがコンセプトです。彫金という専門性の高い技術を、工程と作業内容を単純化し整理することで、どなたにでも経験していただけるように構成しました。
 私が知っている職人の中では、自分の着けたいものが売っていないから自分で作ろうと思ったという理由で彫金を始めた人が割と多くいます。気持ちが揚がる、という意味では、ジュエリーは男女問わず、世代も問わず、効果抜群です。(残念ながら私は、細かい作業が好きという理由なので、ちょっと当てはまらないです。自分で着けることにはあまり興味がないので、、)。

珈琲茶館 左岸

 マルテロドーロのアトリエ兼店舗は、珈琲茶館 左岸の敷地内で隣り合っています。左岸は1988年12月オープン、リニューアルオープンしたのが2016年。今年で32周年です。今では当たり前になっている“古民家カフェ“という言葉が生まれる前から、天井の梁や瓦屋根、庭を活かして、白漆喰の壁が映える喫茶店を営業してきました。コーヒーとケーキの基本的なメニューは開店当時のまま。リニューアル後は、建物が背中合わせの和菓子司 松花堂さんの和菓子の煎茶セットや、本場イタリアのエスプレッソマシンで淹れるエスプレッソやカプチーノなど、新しいメニューも加わってご好評をいただいています。
 左岸の建物は、築100年以上です。元の建物を活かして床を下げ、店舗として改装しました。使われているテーブルは元々和室で使っていた黒漆塗りのテーブルに脚をデザインして高さを出したもの。同じく塗りの欄間は月と雲を意匠化したものですが、100年前のものとは思えないモダンなデザインです。客席の照明も建築当時のもので、天井に付いたフックと照明のフックの接点だけ金属が露出していて、ここが接することで通電するという、現在ではまず使われていないようなちょっと珍しい構造です。
 庭も、飛び石や石灯籠も建築当時のままです。以前は赤松も数本植っていたのですが、手当の間もないほどあっという間に虫にやられてしまいました。今、庭をつくっているのは樹齢400年ほどのドウダンツツジです。春には穏やかな緑の葉と白い花が咲き、秋には真っ赤に紅葉します。季節の移り変わりを感じられる庭です。

アトリエについて

 マルテロドーロのアトリエは左岸と違って新しい建物です。屋根全体が庭に向かって斜めになっているので、奥の壁は高さ7mほどもあります。天井が高く吹き抜けのような開放感のある空間です。
 入り口の引き戸は、かつての表玄関の入り口に使われていたものです。子供の頃、父とキャッチボール中に私の暴投でガラスを割った戸です。今では珍しい削り出しの波ガラスで、手に入りにくいので割ったら大変だそうです。庭に向かう引き戸も旧家屋で使われていた建具です。アトリエ内のテーブル、台などはずっとうちで使われてきた、言ってみれば古道具ですが、現代の新しい家具にはない時間経過が感じられていい雰囲気を持っています。
 お客様に作業していただく作業台は、やはり鎌倉で体験工房をしている友人から譲ってもらったものです。作業台として使いやすい作り、色も大きさもちょうど良くて気に入っています。アトリエの一部は私の作業場でもあるので、ちょっと油断すると資料や工具が作業場スペースを超えて溢れ出してしまうので、お客様に気持ちよく作業をしていただくためにすっきり片付けるよう心がけています。

 次回からは、ジュエリーにまつわる金属や宝石について書いていこうと思います。私自身、知識が曖昧になっているところもあるので楽しみです。