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指輪の品質について <1>

2023.3.1

 見学にみえたお客様が不安に思われることの一つに、指輪の仕上がりがあります。

 もっともな不安だと思います。特に結婚指輪は一生に一本の大切な指輪で、しかも作るのは初めて作る自分たち。重ねて自称・不器用のお客さまならなおのことです。

 また、素材の品質は良いものですか?という質問をたまにいただきます。マルテロドーロの指輪は、市販のものと比べるとずいぶん安価なので、品質の悪い金属を使っているのではないかという疑問です。

 これも、もっともな疑問だと思います。理由もなく安い商品はおかしい、何か裏があるはずと思うのが普通です。

 今回はこの2点についてお話したいと思います。

 初めてでも高い完成度

 

 まず、”仕上がり”という品質について。

 仕上がりは、市販の商品に見劣りしないものができあがります。

 とはいえ実際のところ、さすがにプロの職人が本気で仕上げた指輪の完成度には及びません。ですが、プロ100点に対して低くても90点。結婚指輪という大切な指輪が、曲がっているとか傷があるなんて話にもなりません。言われてみればそうかも、という程度の表面の揺れや、ルーペで見ないと分からない擦れ跡があるレベルの指輪ができます。これは、たぶん1ヶ月も着ければ当たり前についてしまう傷より、ずっとずっと軽いものです。

 ではなぜ、未経験のお客さまが初めて作って、これほどの完成度が出せるのでしょうか。

 例えば、私が集中して指輪を作ると、1本30分ほどで完成できます。この30分の中には、経験の積み重ねとしての慣れ、使う工具の工夫と選定、製作中の指輪に起きたトラブルを解決する知識などが目一杯詰め込まれています。

 これを細かく分解して、やっていただく作業の工程と工具を考え抜いたのが、マルテロドーロの指輪製作です。3時間かけて1つ1つの工程を説明しながらゆっくり確実に作業していただき、折々に私が最小限の手直しを入れて軌道修正することで、失敗なしの完成度90点以上を、自信を持ってご提供できるわけです。

 きちんと手順を踏めば、きちんとできあがります。

構造的な品質

 ところで、どこでとは言いませんが、時々ものすごく細くて薄い結婚指輪を見かけます。ファッション的な指輪は別ですが、そういう結婚指輪は、私は基本的にあまり誠実ではないと感じます。

 結婚指輪は特殊な指輪で、着けっ放しになさる方も珍しくありません。これは指輪にとってなかなか過酷な環境で、それなりの頑丈さがなくては使用に耐えられません。頑丈であるということは、太くて分厚いということです。言ってしまえば、重さ=強度です。

 軽い指輪はかわいくもあり、値段も安くできるので手が届きやすく、いろいろなデザインの指輪をたくさん買えるという点は確かにありますが、殊に、結婚指輪についてだけは向いていないと思えるのです。どうしても最低限の強度は必要なのです。かといって、太くて重い指輪は着け心地が悪く、無駄に高価になります。やはり大事なのはバランスです。

 余談ですが、お店の儲けを考えますと、軽いリングをたくさん売った方が基本料金をたくさんもらえるので売上げは上がります。

 手作り指輪の価格は、基本料金+材料費で計算されることが多いです。例えば合計10gの指輪を売るとします。材料費は何本の指輪を作っても10g×地金単価なので変わりません。ただし基本料金は、1本2gの指輪を5本売るのと1本5gを2本売るのとでは、3本分も売り上げが変わってきてしまうわけです。

 当店の指輪の幅と厚みのバランスは、実際に厚みや幅を変えて作って強度実験をしたり、他社さまの商品を参考にしたりして決めたものです。特に以前務めていたメーカーが携わっていた、あるブランドの商品のデータは、よく覚えていましたので大いに参考にさせていただきました。ですので、ご心配には及びません。

 当店の指輪が低価格な理由は、品質を下げているからではないのです。これについては「マルテロドーロの指輪が低価格の理由」というコラムがありますので、興味のある方はそちらをご覧ください。 

 次回、後半の「素材の品質について」お話しします。